臨床心理士　吉沢伸一のホームページ

ここでは、他のページで同等として扱ってきた、カウンセリングと心理療法の違いについて述べたいと思います。あくまでも、私個人の理解でありますので、異なる見解もあるでしょう。しかし、ここでは私が提供しているものという理解をしていただければ幸いです。

■カウンセリングとは

カウンセラーは日本語にすると、相談役ということになります。基本的に、カウンセリングとは相談のことであり、それにカウンセラーは助言を与え、こころがよりよい方向に行くことを導きます。しかし、助言だけを与えているだけでは、その人自身が自ら考えること、自らの中にある解決能力を発揮することができません。その持ち合わせている力を発揮させるためのカウンセリングというものがあります。基本的に助言は最小限にして、その人が自ら語る中で、見えてくるその人が進むべき道を明確にするお手伝いをします。そのために話をよく聞き、語られていることを明確にしたり、要約して確認したり、辛い気持ちに寄り添ったりと、相談に来た人が自ら解決の道をみつけられることを援助します。具体的な助言を中心に進める面接は、ガイダンスと言った方が適切かもしれません。私が提供するカウンセリングは、主には問題にご自分で対処していく力を育んでいきます。そのために、場合によっては助言することもありますし、言葉にならない気持ちを言葉にして伝え返すこともあります。基本的に自己理解を深め、何とか苦難に対処することをサポートいたします。

■心理療法とは

自分の中にある解決能力を発揮できるためということは、カウンセリングと共通かもしれませんが、基本的には、よりご本人が意識していない部分の自分についての気づきを得ていくことを目的としています。私が実践しているのは精神分析的心理療法というもので、自由に自分を語っていく中で、知らぬ間にやり過ごしていた自分の気持や想いを実感していきます。また、感じないように、思い出さないように、心の奥底に押しこめていたり、切り捨ててたいたものをもう一度こころの中に取り戻していきます。その過程では、混乱したり動揺する時期も場合によってはあるのですが、そのことにより、本当の自分の気持に率直になれ、これまで避けたり恐れてきたものに対する構えが変わってきます。具体的な問題解決を目指すというよりも、ある問題がきっかけで起こっている症状、困難さを生み出しているご自分のパーソナリティの変化を促します。人は、誕生してからこれまで、それぞれやむにやまれぬ事情があり、いろいろなものを背負って生きています。その歪みが、パーソナリティに影響している場合に、どのようにしてそのパーソナリティが形成されたのか、つまり、今の自分が今の自分として形作られてきたのかを振り返る作業の中で、自分の生の情緒に触れていくことになります。それは、決して過去のことではなく、今現在もこころの中で生き続けて生きることや人間関係に影響を与えているのです。それを理解していく作業の積み重ねにより、本当になりたい自分を模索したり、受け入れ難かった苦痛や現実を避けられないものとして心に収めていきます。これは、非常に心身ともに大変な作業となります。数年単位で継続する必要があることもあります。物事や人間関係へのこれまでの対処の仕方では、どうにも先に進めそうにない場合には、このように時間をかけて自分を振り返り、こころを見つめていくという作業が、より本物の自分らしさを持つため、物事や対人関係への無理のない自分らしい対処を身に着けていくための基盤となっていきます。このような心理療法は、精神分析的心理療法と呼ばれています。自由に自分のこころを語ることを積み重ねていく中で、これまで頭で考えても先が見えなかった状況で、思わぬ自分の大切なお気持ちに気づかれることもあります。

■二つの共通性と相違性

私が提供するカウンセリングは、あくまでも問題解決というところに視点があります。しかし、場合によってはそれは困難なことで、問題のある現実を受け入れる必要があるかもしれません。また、問題を解決する力をつけることには自分が変わるという部分も含まれてきます。より自分自身という存在を見つめ直していくという作業に重きを置く場合に、私は心理療法と呼ぶことにしています。よって、カウンセリングと心理療法ではお会いする頻度などが異なります。基本的には定期的にお会いすることがよいと思いますが、カウンセリングの場合は、クライエントの方のニーズにより、頻度は毎週・隔週・月1回・必要に応じてという形式ですが、心理療法の場合では、最低毎週1回同じ時間にお会いいたします。それは、いつも同じ場所、同じ時間と定まっている方が、よりこころの動きが見えやすくなるからでもあります。